新海誠作品が怖くて観れない

僕の中でどんなホラー映画よりもよっぽど怖いと噂なのが「新海誠作品」だ。

だから、今まで一本も観たことが無い。怖すぎるから。

昨年末からネットでもテレビでも「君の名は。」の映像の断片を目にすることが多いけれど、その度に僕は布団に包まり小刻みに震えている。RADWIMPSの「前前前世」に至っては耳に残る良い曲すぎて、無意識に口ずさんでしまっては映画(の断片)のフラッシュバックに苦しむというセルフPTSDを繰り返す有様だ。

 

僕が新海誠監督を知ったのは「秒速5センチメートル」の頃だった。確か山崎まさよしの「One more time, One more chance」をバックに男が誰かを探して街中を彷徨うような動画だったと思う。たぶん予告編か何かだろう。

異様なまでに書き込まれた背景に満たされなさそうな男が彷徨う絵面、幻のような少女の影、そしてバックに流れる山崎まさよし・・・・

一目見て「あ、これは精神的に狂わせにくるタイプの映画だな」と思った。

 

僕を含め、不遇とは言わないまでも青春時代が不完全だった人間は、それ以降いかに普通に人生を歩んでいたとしても、何処かで「満たされない」欲求があって、でもそれは絶対に満たされることの無い不可逆なものであるが故に、固く鍵をかけて日々を生きている。

どうせ、鍵の向こうにあるのはドロドロとした未練だとか恋とか大変気持ち悪い代物で「そんなものは無い!」と思い込んだ方がよっぽど建設的であることを僕は学習している。封印されているのは怨念とか亡霊とかそう言った類のものだ。

想像だけどこの「秒速5センチメートル」はその鍵を開けにくる映画だと思う。

僕はおそらく、この映画を観て泣く、いや嗚咽するかもしれない。

でもそれは決して「世に出して良い感情」では無いし、一度亡霊を解放してしまったら、もう日常の生活の何もかもが虚しくなっておかしくなってしまうだろう。

そういう内面の「鍵」に敏感な僕にとって「お前の望んでいる、もう実現しない世界」を完璧に映像化して突きつけてくるあの数分の予告編はとても暴力的で怖かったのだ。

 

なんとなく、貞操を守る乙女の恐怖に近いかもしれない。

「もう戻ってこられないよ」的な。

 

それ以降、新海誠監督作品に度々聞いてはいた。もちろん観てはいない。

それでも一応あらすじを読むくらいはしていて、相変わらずそのセンシティブな部分に引きずり込む暴力的なスタイルに震えてはいた。

でも、やはり一部男子の「業」に迫った内容からか新海誠氏への世間の評価は「カルトな人気を誇るアニメ監督」に過ぎなかったと思う。

そりゃそうだ、新海誠作品はどちらかといえば「人目に触れてはいけないもの」でそんなものが、大ヒットして良いわけ無いのだ。

大々的な宣伝もなく、おかげで、しばらくは僕は安心して「一般人男性」を過ごせていた。

 

そこに来て「君の名は。」の大ヒットである。冒頭で書いたように震えが止まらない。

知っている要素としては「高校生」「入れ替わり」「SF」「恋愛」といったもの。

相変わらずヤバイのを散りばめてきてるなといった感じ。

まあ映像の断片を観るに「秒速5センチメートル」の頃よりもややマイルドになっている気もするけれど、なんだかオブラートの隙間から監督の怨念や暴力的な所が漏れているような気もする。

ただ、映画評論家も「今回の新海は違う!」とか言ってたしなあ。

正直、怖いけど嫌いでは無いだけに見れるレベルで希釈されてれるのならトライしたい。

 

あの、

これ観に行っても大丈夫なやつですかね?

僕の心が壊れない程度に楽しめるエンタメ映画ですかね?

秒速5センチメートル」の頃より僕は精神的に消耗していますけれど。