社長!おまえがなんとかしてください
仕事の日。まあ、大体仕事の日なんけれど。
朝礼早々社長がキレる。どうやら基幹商品の売り上げが大幅に落ちたのが原因らしい。うちの基幹商品というのはまあ、零細企業にありがちな「最初に始めた!」ということだけを武器になんのイノベーションも進歩もせず、半ば慣例的にお客様の予算の上に鎮座しているような代物。長年「ケンちゃんラーメン新発売!」的なノリで営業に行っては「お約束」として契約してもらうような状態が続いていたわけだ。
しかし最近は「此の期に及んで新発売って流石にまずいですよ(冷笑)」とマジレスをされる機会も多くなり売り上げは減少の一途である。あたりまえだ。
社長はどんどんヒートアップしていく。
「お前らはいったい今まで何をやってたんだ。こうなるのは20年前から俺は分かってた!!」
おうおうおう。すげえ事言うな、お前な。
なにこれ?今流行りのマウンティングとか言うやつ?もしそうだとしても、
会社の凋落予想を的中させた事を盾にマウンティングを取ってくる社長なんて中々いないよ。
つーか
殆どそれを放置し続けていたあんたのせいだろ。
しかも営業部の会議でそれを言ってどうする。商品の問題なんだから。まあ「商品企画部」なんて存在しないんだけど。聞いた話だと「良い商品が開発できないから自然消滅した」らしい。すげえな。仮にも、法人格で自然消滅て。
で結論として、社長は
「はやく新商品を開発しろ!」とのこと。
いや、ですから我々は営業ですし、そもそもお前がせめて10年前から・・・つーか商品企画部を・・・、という詮無い思いがぐるぐるする。話は進む。
どうやら社長にも「新商品の腹案」があるようだ。
「うちの商品をアプリ化する!」
僕が思うに弊社商品とスマホアプリというのは、骨髄ドナーを見つけるのと同じくらい適合性が薄く難しいものだ。正気か?
「ついては、アプリ業者を見つけたかから今後の方針について話し合うように」
すでに会議室の後ろにはアプリ業者が待機していた。どうやら社長の知り合いの業者らしい。
「社長の知り合いのアプリ開発業者」
闇しか感じられない言葉だ。まだ「消防署の方から来た人」の方が信頼出来のでは?
そして「今後の方針について話し合い」ってなんだよ?ひょっとして「アプリ開発をする」しか決めてなかったの?それは企画とは言わねえよ。ただの縛りプレイだよ!
これはあれだな、旧知の知人と久しぶりに会って上手くノせられて、社長も良いとこ見せたいから仕事に繋げちゃったパターンだな。誰も会社の事を考えず金だけ取られる奴だ。
まあ、とにかく「やることは決定」とのこと(ワンマン企業ってやだね)。僕は一応「スマホアプリがわかる若手」としてこの件に関わることになった。いやだね。
当面は二択。
「『シンプルさが一番です!』と主張して制作費を減らすことで会社へのダメージを抑えるか」
「機能てんこ盛りで社運をかけた勝負に出るか」
うーん。手探りです。
というか社長、この企画の予算はお幾らなんですか?
これが闇にまみれた中小企業で働く僕の日常です。