教室に入ってきたテロリストを倒せなくなった。

「教室に突然乱入してきたテロリストを華麗に倒す僕」というのが中二病の定番として扱われるようになったのはいつからだろう。もちろん僕も幾度となくその妄想を繰り返した。こんな想像、当時でも口に出すわけ無いのに、どうしてみんなが同じような妄想にたどり着いたのかとても不思議だ。それこそ、中二にしか授けられないテレパシーめいたものなのかもしれない。

しかしあの昼下がりの教室で僕以外の誰かも必死にテロリストと戦ってたんだなと思うとなんだか微笑ましくなってくる。

みんなはどうやって戦った?

僕の場合はこうだ。

 

授業中、前の扉を乱暴に開けて入ってくるテロリスト!全体的に黒目の服でマスク、武装はナイフとマシンガン。ああ、クラスの人気者の小林くんが撃たれた。当然、パニックになる教室。でも僕は慌てない。誰よりも早く伏せる。棒立ちのクラスメイトと違ってこうすれば弾が当たらないことを僕は知っているのだ。そして、ナイフで刺された時のためにお腹に教科書を巻くことも忘れない。ベストなのは・・・地図帳だ!

あえて戦うなんて馬鹿だ。目指すは廊下側の壁の下にある小窓からの脱出だ。ほんと、なんのためにあの小窓ついてるんだろ?匍匐のまま到着!脱出成功。僕だけ逃げるもんね。その時、クラスの可愛い田中さんの叫び声。どうやら人質に取られたらしい。

やれやれ。

そっと前のドアから僕登場!予想外の僕にテロリストは全く気がついていない。背後から飛びつく僕。この距離で銃は使えない。

ナイフで僕のお腹を狙ってくるテロリスト。残念!そこには地図帳が!呆気に取られるテロリストの隙をついて、マシンガンにしがみつき銃口をテロリストに向けためらわず銃口を引く。

僕にかかる血と呆気に取られるクラスメイトたち。

僕は、ちょっとした宿題を片付けた程度に浅くため息をついた。

 

みたいな。

多分、人それぞれ色々なパターンがあるんだろうなあ。是非聞いてみたいところ。

 

ただ、最近こういう妄想をしてみてもめっきり勝てなくなった。

大学生ぐらいまでは順当に勝てていた気はするのだ。それが、社会人5年目位から逃げ出すことには成功するものの、そのままみんなを見捨てて逃げるようになり、今では、入ってきた瞬間に見せしめとして頭を撃ち抜かれるイメージしかわかない。

万能感の消失。自分が特別で無いことへの気づき。自分の能力限界の認識。

要するにこれが、大人になったって事なのだろう。

勇敢に立ち向かっていた僕はもういない。

 

皆さんはまだテロリストを倒せますか?