僕の無能を生きる糧とするのはやめてくれ

仕事でトラブルを起こした。

あるクライアントの要望が実現可能かどうか別部署の担当に相談した所「OK」が出たので、その方向で仕事を進めていたのだけど、完了間近になってその部署の上長から「それはできない」との通告を受けてしまったのだ。

もともと強い要望という程ではなかったものの「発言を覆された」ことでクライアントは気分を害してしまい作業は止まってしまった。

 

割とどこにでもある窮地だとは思う。個人的には別部署に「おまえ、出来るって言ったじゃねーか」と怒りの矛先を向けたい気持ちはあるものの仕方がない。これは現代を戦う社会人諸氏なら、おそらく「社内調整もできないなんて、カバに食われて死んじゃえば(笑)」と思うような嘲笑い案件で、つまり、僕が無能というだけの話なのだ。

実際に僕は無能だ。「人と繋がりを築く意志も力もない」まま、成り行きで営業職に就き、そのまま10年以上営業として職を転々としているなんて筋金入りの無能でしかない。だいたい「人に関心が無い」んだから営業なんて続くわけねえだろ。馬鹿か。他人の気持ちとかメンツとか全然わかんねーよ。

そして、それでもなお「職が見つかりやすい」という理由だけで今でも営業をやっているあたり心底救いがたいと思う。

 

とにかく、この件で僕が出来ることは精々代替案を出すかなめるような謝罪でもう後は先方の出方次第である。状況をコントロールしようとも思わない。僕はそんな力もないのだから。

やっぱり僕は無能なのだ。

 

なので、この件に限らず(ほぼ自分のミスのだが)何かと目をつけられては叱責を多く受ける。もちろんそれは構わない。許してくれとも言わない。

ただ、

 

お願いだから僕の無能を生きる糧とするのはやめてくれ。

 

同じ職場の一回り上の先輩の話である。彼は正岡子規のような異形の輪郭と糸のように小さく陰湿な細い目、なおかつ青みがかったハゲ頭が特徴的な同僚だ(印象操作)。容姿があらわすように彼の性格は端的に言ってヤバい。

 

同僚が曰く「人間関係で飯を食う男」

そのヤバイ先輩は僕と同じ営業で、彼の営業方法は徹底している。

手段を選ばずクライアントの偉い人に取り入って、その威光を全面に浴びながら他のクライアントをねじ伏せるのだ。

「Aさん知ってます?僕は昵懇の仲でして、」

「ああB部長?僕はよく飲みに行きますよ!」

みたいに。

時には「ああ、その件でしたら私は生き字引でして・・・」なんて言ってることもある。「生き字引」って自分で言うか?普通。

また、どうもそれを本当に自分の優秀さと感じているところがあって彼は下の人間には非常に偉そうでわがままだ。まるで一国の宰相のように振る舞う。

ゆうてもお前も僕と同じ底辺サラリーマンだろうに。

 

そんな、彼の真価が発揮されるは取引先でトラブルがあった時だ。

トラブルの方を聞くや否や、自分の知る関係各所に連絡しトラブルを大きくする。

で、取引先担当者が「ヤバイ」と思った時に半ば傲慢とも言えるような偉そうな態度で自分が現れ、各所を収めるのだ。

これで飯を食う。なんというマッチポンプ営業。

 

本当に性格が悪い。自分自身は偉い人の靴から舐めとったクソで出来ているような人間にもかからず、その腐臭で関係各所を制圧し自分の影響力を高めている。

まあ、その方法自体は営業では珍しくはない。

 

問題なのは社内のトラブルにもその方法をとることだ。

そう、冒頭で書いた僕の起こしたトラブルに彼がしゃしゃり出てきてしまったのだ。

自分で言うのもなんだけど、このトラブル自体はありふれたもので大げさに騒ぐほどでもない。お願いをすれば先方の要求にも十分実現可能で「すいません、今回はそうします」と伝えればそれで済む話なのである。会社にもほとんど害はない。すぐ終わる。

それがバイ先輩の所為で大事になってしまった。いつものごとく、彼は上長、社長、別部署、社内全体にこのトラブルを(大声で)伝え、いかにヤバイ事態なのかを説明し火をつけて回った。加えて自分も動き回るのだから手に負えない。

 

そうなると窮地に追い込まれるのは僕である。周りの目はともかくとしても、僕がクライアントと話をしていて、段取りをつけているのにそれを無視して遠回りな解決策を押し付けられるのには困った。そして、それが実行されてなと見るや公衆の面前で僕を叱責するのだ(OKを出した別部署には何故か謝りに行かされた)。

自分や偉い人に対しては中国人のように執拗にメンツにこだわるのに同僚のメンツは簡単に踏みにじるのである。

同じ「虎の威を借る狐」で有名なスネ夫やトンガリですらあった慈悲の心が彼には全くない。

彼はヤバイやつで、サイコパスだから、本当にこのトラブルを解決するために動いてはおらず、ただただ、自分の社内的な影響力を上げたいだけ。そういう先輩にとって僕は格好の獲物だったのだろう。

 

結局、このトラブルは本来なら1〜2日で解決するところを1週間も引き伸ばしたげくだいたい彼の手によって解決した(ように周りの人には見えただろう)。

この1週間で僕は本当に消耗したと思う。

主にヤバイ先輩のために。全く無駄な消耗だった。

おそらく彼は、来週の会議で私に全体への謝罪を求めるだろう。

 

僕が無能なのは認める。

ただ、その無能さゆえにヤバイやつの糧となってしまったことが一番悔しい。

まんまと、彼の社内権力を高める手伝いをさせられてしまった。

精神的にも酷くやられた。主に社内調整で。

営業としてはいいかもしれないが、社内にとって彼は害悪であると思うのだけれど、なんとか排除する方法はないのかな?

いっそ今度は先輩がトラブルを大きくするまでもないくらいの炎上をしてやろうか。

 

※ヤバイ先輩は昔「いじめられっ子」だったと聞いたことがある。もしかしたら、彼のヤバイ性格はそれ故の防衛本能なのかもしれない。