一橋大ゲイ自殺…いつも勝つのはレイシスト。

相模原障害者施設殺傷事件、一橋大ゲイ自殺と、最近被差別者に対する凄惨な仕打ちが続く。どちらも被害者には落ち度はなく、レイシストが袋叩きにあっていい事件だ。

しかし思いの外被差別者側の旗色は良くない。いや、むしろ事件の波及の仕方、人々の反応などを見ると「あ、これレイシストの勝ちだわ」と思ってしまうことすらある。

人死にまで出ている事件で、どうしてそう感じてしまうのか?

今回は一橋大ゲイ自殺事件について考えてみよう。

 

■ 一橋大学ゲイ自殺事件

みなさんご存知かと思うが、簡単に説明すると、

「ゲイであるA君がノンケのZ君に告白したところ、振られた挙句、ゲイであることを仲間にバラされてしまい、その後A君はパニック障害など重度の精神障害に見舞われ通学不能、大学側に相談したものの適切な対応を受けられず自殺してしまった」

という事件だ。

現在遺族は一橋大学法科大学院とバラしたZ君を提訴中である。

一見して、悲劇的で痛ましく、同時にLGBTへの差別を世間に訴えるに足る事件の様に思える。しかし、世間は良くて賛否両論だ。

 

1、「自殺」だけが異質すぎる

この事件、さらに要約すると実は「フラれたことを仲間内にバラされました」というだけの事なのだ。確かに悪いことではあるかもしれないが、私事においてこれは結局「人の秘密は守ろうね」程度の道徳心の話にすぎない。しかし、それでA君は自殺してしまった。

人は誰しも秘密を持っているものだろうし、少なく無い数の人々が実際、「バラされた」こともあるだろう。

一橋大で起こった出来事は容易に自分に置き換え可能なものであり、そう考えたときに、どうしても「自殺」という結末だけが異質に思えてしまうのだ。

だからこそ、自殺の原因が「本人のメンタリティにあるのか」「LGBT差別にあるのか」が曖昧になってしまう。賛否両論の要因はここにある。

さらにまずいのはA君(ゲイ)が自殺によって

LGBTは人死に発展しかねない重い秘密」

という印象を多くの人が持ってしまったことだ。

確かに、この事件を機にアウティング(望まぬ暴露)による被害者は減るかもしれない。

しかしそれは、あくまでリスク回避のためだ。

「そんな、マフィアみたいな死の掟に関わりたく無い。」

といった様な。受容とは程遠い。

いったい、それでいいのか?A君が死んでしまった今となってはもうわからないことだ。

 

2、Z君(ノンケ)を訴えるという悪手

今、A君の遺族は大学院とバラしたZ君を提訴中である。

要求金額が300万ということだから、おそらくアピール目的の提訴だろう。それ自体は別に悪いことでは無い。

ただ、Z君を提訴する必要はあったのだろうか?

Z君が仲間内に秘密を暴露してしまったのは悪い。しかし、それはあくまで道徳の問題ではなかったか。

誤解を恐れずに言うのであればZ君もまた被害者だ。

今まで親交があった人、それも同性から告白された上にゲイという「人死に関わる様な重大な秘密」まで勝手に暴露された衝撃はいかほどのものか。

告白されてからアウティングするまで二ヶ月ある。その間 Z君が何を考えていたのか僕にはわからない。ただ、結果としてB君は「仲間内へのアウティング」という最悪の行動をとり、その結果A君は自殺してしまった。そして今法科大学院生の身でありながら被告として訴えられようとしている。

これはZ君に取っても相当な悲劇の様に思える。

繰り返すが、確かに「他人の秘密をバラした」という点でZ君は悪い。

しかし、Z君が秘密をバラしてしまったのは、そもそも「LGBTを許容しない社会(風潮)」があったからでは無いのか?もう少しLGBTへの理解が進んでいればこんなことにはならなかったはずだ。その点で僕はZ君に同情的である。

にもかかわらず、遺族はZ君を訴えてしまった。これは悪手と言わざるをえない。ただの個人攻撃だ。

この行いで少なく無い数の一般人は「ああ、LGBTの人ってやっぱり怖い」と感じでしまったのではないだろうか。

僕なんか、まるで「ノンケへの宣戦布告」の様にも受け取ってしまった。

正直、素直には応援できない。

せめて、「ケアを怠った」として法科大学院だけ訴えることはできなかったのだろうか。一橋大はいうまでもなく国立である。

そうすれば、今よりもっと社会を変える上で支持を集めやすかった様におもえてならない。

 

本事件での敗因は「被差別者側の過剰な被害者意識」だ。人は皆、容姿、身長、収入などいろいろなコンプレックスや秘密を持っているが、なんとかそれと折り合いをつけながら生活をしている。善悪は別にして、そんな社会でどストレートに「ありのままで生きさせろ!」と、市井の人々に牙をむいたところで理解はされにくい。

法的手段をチラつかせている分、逆に「脅迫」と捉えられることもあるだろう。

結果、レイシストに利することとなってしまっている。

もっと、マジョリティであるノンケを慮って、ソフトに淡々と国を責めるべきだったのである。

 

 

本当はこの後「ファインプレーが光る19人殺し・植松聖」について書きたかったんだけど、思いがけず長くなってしまったのでそれはまた次の機会に。

 

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら

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