「分不相応な会社」に入ると後遺症で人生壊れるよ。

「〇〇さん、おまえホント障害者だな!」

それは、同僚から僕に放たれた言葉だった。

しかも会社の朝会というオフィシャルな場所で。

 

でもそれも仕方が無いと思う。未経験の業界に就職して一年。僕は何もできなかった。膨大の量の覚えるべきタスク、社風というには生ぬるい程の上下関係とノルマの厳しさ、「顧客を洗脳する」レベルの親密さを求められる営業現場。それら全てを円滑に、しかも高速で回していかなければいけない環境に僕は全くついていけなかった。

朝会でノルマ進捗状況について詰められれば

 

僕「あ、あ、あ、はい、それはなんとかとかやるつもりですぅ」

上司「アポは取ってあるんだよね?合意したんだよね?」

僕「あ、いや、その、これからなんとか・」

上司「・・・君、それで何も感じないの?・・次」

 

という感じだったし。顧客に対してだって

顧客「これ、こうしたいんだけどできる?」

僕「いやーうーできるかな?調べてまた折り返しますぅ」

・・・5分後・・・

顧客「あーもういいよ!他の営業さんに聞いてわかったから!ほんとばかじゃ無い?担当替えてほしいわ!」

 

なんて事は日常茶飯事で、それに加えて、行きたくも無い飲み会に無理やり駆り出されては顧客や同僚から「お前みたいなイライラするやろうを見たのは初めてだ(笑)」「こんなやつがいるから世の中がおかしくなるんですよね?」「おまえこの業界に必要無いよ」なんてことを明け方まで、ずーっと言われる。場を盛り上げるために自作ラップの披露までやらされた。

 

もちろん次の日は会社だ。

 

否定否定、また否定、こんなことが一年間ずーっと続いたわけだから、末期は本当に障害者だったのだ。

嫌なことから逃げたいあまり、職場以外での仕事を放棄し、何も考えず只々家でうずくまる日々。当然業務遂行能力は向上せず、仕事場でも「あうあぅあうあー」という以上の意味を持った言葉を発せなくなってしまった。考えることを放棄し、ただただ、タバコだけを吹かすだけの白痴野郎に成り果てていた。

 

結果僕は一年足らずで僕はこの会社を去ることになる。

「会社を追われる」という言葉がふさわしい見事な敗走だった。

 

しかしこの会社は「ブラック企業」では無いと僕は思う。業界の中では大手だし、福利厚生も充実、何より給料は固定給でボーナス込みで1000万弱という破格の条件である。しかも社歴2社の僕に対して。これがブラックなわけ無い。

 

ただ、グズで事務処理能力が低くてコミュ障の僕にとっては、ただただ「分不相応の会社」だったのだ。

 

でも、やめたからといって全てが元どおりになるわけではない。 

 そして、その後僕はしばらく無職で前職で植え付けられた無力感や無能であることを実感した感覚を忘れさす頃ができず、現実逃避のためにギャンブルや酒に溺れ、怠惰な日々を過ごした。落ち込んだ時はデパスを過剰服用してハイになっていた。思考停止とはこの事だ。何も考えれなかったし何も考えたくなくった。

 

ただ金も尽きてきたのでそうも言ってられなくなり僕は泥のようのな思考から一歩抜け出し就職先を探した。

幸いな事に僕は就職先をすぐに見つける事が出来た。前職より大幅に年収は下がったものの、なんとか自分の能力でできるような仕事だ。

でも、そこでも前職の経験が頭をもたげて来る。なんといっても僕は「障害者」である。

そういう事実が脳内で確定しまている以上、仕事をするという事は恐怖でしか無い。

他者の企画に意見を述べる事、同僚と何気無い会話をする事、取引先と会って話をする事、各種事務処理、以前であれば何気なくできていた事がある程度心に発破をかけてやらないとできなくなってしまった。どうすれば「障害者」っぽく無いかという事に意識を集中しすぎて会話へのレスポンスも悪く、顧客や同僚へのコミュニケーションは十分取れていない。頭のキャパシティ位が狭まった感すらあり、長考の末センスの無い返しをしてしまう事もしばしばで、それがまた無能感を増進させる。負のスパイラルである。つらい。僕は確実に退化した。

今のところ現職は優しく大らかなので何も言われないがそれもそれで恐怖であり、日々おののいている。

 

これらは、だいたい僕が「分不相応の会社に入ってしまった後遺症」であると思う。

僕は運良く社会復帰の機会を与えられたけど、そのままドロップアウトしてしまう人がいてもおかしくはない。ほんと人生壊れるよ。

 

もちろん、これはもともとも僕が無能であったがために引き起こされた事態であるという事は否めない。

 

ただ、今「レベルアップのための転職」を考えている人たちは留意してほしい事だと思う。

僕も前職に入社した当初は「給料もステータスも高い!未経験の分野だけど職種は同じだし、超勉強してバリバリ働いてハイレベルな男になるぞ!」と挑戦するような気概で乗り込んでいった。結果この有様である。

これはケースバイケースだが、明らかに自分の現状の能力以上の会社からオファーをもらった時は、舞い上がるのも程々に本当に自分の適性と能力を改めて見直して冷静な判断をしたほうがいいだろう。一種のリスク回避のために。

 

って、こんな事を書いている時点で僕の後遺症は完全に癒えてはいないのだなあ、と思う。